私は無力だ。それでいいじゃないか。心底そう思えた時,何かが死んであなたは真に生き始める。

アル中詩人~手ぶらの乞食~かく語りき

アル中地獄からの生還とその言葉たち

絶望の果てに

アルコール依存性の狂気

私の半生は酒と共にあったと言ってもいい。

酒は生涯の友と思っていた。

ところがね、いつの頃からか苦しみに変わった。

酒が抜けると手は震えだし

動悸息切れに襲われるようになった。

精神がやられて

どんどんおかしくなって行く。

何度も酒を断とうと思ったが止められない。

飲むも地獄飲まぬも地獄のアル中地獄。

まるで底なし沼の様だった。

 

「頑張る自分」の落とし穴

「もうあとがない」

「なんとしても酒を断ってみせる」

そうやって固い決意で断酒に挑む。

しかし周囲との溝は深く信用もない。

大抵の場合止めようと決意する頃には

問題は山積みとなっている。

そりゃあそうだろう

今まで好き勝手に飲んだくれて

何の問題もないふりをして生きて来たのだからね。

「それでも頑張るしかない」

この“頑張る自分”

この“頑張る自分”が曲者なのだ。

一体コイツは何者なのだろうか?

その“頑張る自分”とは誰なのだろうか?

飲んだくれてアルコール依存性に陥り

自己憐憫に耽る自分”

ソイツそのものだ。

その“頑張る自分”はやがて不平不満を口にするようになる。

「こんなに頑張っているのに」

「誰も何も分かっちゃいない」

「お前らに俺の何が分かる!」

という風にね。

 

しかしそんな私に転機が訪れたのは

ほとほと自分に嫌気がさした絶望の最中だった。

「もうダメだ」

「自分にはどうすることも出来ない」

「こんなダメ人間死んでしまえばいい」

心底そう思えた時私の中で何かが死んだ。

もう何も残されていなかった。

ただ、ただ、“なにものでもない何か"が

そこに鎮座していた。

私は今でもそれを恩寵だと思っている。

 

それが私の“酒との決別”の時だった。

 

 

自分を失うということ

 

だからね。

もう完全に白旗を上げる事だ。

「私は無力だ」

それでいいじゃないか。

何もアルコール依存性者に限った事ではない。

誰もが苦しみを背負っている。

これは全ての人に言えることだ。

恨みを捨て

怒りを捨て

嘆きを捨てて

あなたが掴んで放さないそのストーリー

あなたがあなたと思い込んでるその人。

その人まるごと捨て去ったらいい。

どうやって?

諦めるのさ。

諦めることによって自分を失う。

良かったじゃないか。

失ったのは“偽りの自分”なのだから。

もうその人はいない。

死んだ。

おめでとう!


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凍てつく空のもと

掴むものもなく

枯れた手で泳いでたら

ふいに差し込んだ陽のひかりに手をふった

挨拶する間もなく

何処かへ行っちゃったけど

さようなら

またね

 

 

ごきげんよう